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1月, 2019の投稿を表示しています
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アカシア句集 20  前へ    次へ 皇后の荘たりし谷稲の花   平成30年2018:8月下旬、精華町の山田川を歩いたら稲の花が咲いていた。   通った精華町の柘榴地区は、地元の日出神社の説明によると奈良時代、光明皇后の荘園であったらしい。   皇后のための稲を作っていた奈良時代から、稲の花が咲いていたと思うと不思議な気もした。 猪垣の中に山門宇陀の寺                      平成30年2018:9月奈良・宇陀市の仏隆寺を訪ねた。宇陀市といっても山の中の寺なので、猪や鹿が出るらしい。   有名な彼岸花はまだ蕾だったが、寺の急坂に沢山白い茎を伸ばしていた。しかし山門への坂の途中に猪垣があり、   手で扉を開け閉めしないと入れなかった。 デモ果てて帰りばらばら十日月   平成30年2018:9月友人とJR奈良駅から三条通りを「九条改憲No!」のデモ行進に参加した。   デモに参加したのは学生時代以来60年ぶりだったが、夕方だったので街は外国の観光客ばかりで   あまり効果的でなかった。県庁前で解散したが、帰りはばらばらで半月が輝いていた。 作曲の一段落に虫の声   平成30年2018:10月久しぶりにパソコンで行進曲を作曲した。出来栄えは不評だったが、   自分なりに納得して3曲を作った。作り終えてファイルを保存したら虫の声が聞こえた。 綿弓を音立て弾く乙女かな   平成30年2018:11月奈良・大和民俗公園のふるさとフェスタを訪ねたら民俗博物館の入り口のフロアでは、   木綿糸作りの実演・演習があり、綿弓で糸ほぐしと糸車で糸作り(糸ぐり)をしていた。   中学生らしい女生徒が指導員の指導を受けながら、綿弓で木綿の花を弾いて音を立てていた。   芭蕉の句 「綿弓や琵琶になぐさむ竹の奥」にあるように、ビューンビューンと鳴らしていた。  娘の立てし泡をほめもし初点前   平成31年2019:1月正月に帰省した子の発案で長く使わなかった炉を使ってお茶会をした。   孫娘が母親に教わりながらお茶を立てた。茶筅を使い泡がきれいにできたので、皆がほめながら   初茶をいただいた。 淋し気に見ゆる桜の花盛り   平成31年2019:4月近くの富雄川岸を歩いたら大きな桜の木が満開だった。
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  アカシア句集 19  前へ    次へ   書初の写経を終へて塔見上ぐ   平成30年2018:1月薬師寺の写経道場を子供達と訪ね、全員で写経した。その後、別室で初点前をいただいた。   道場を出て見上げると、西塔と修復中で覆われた東塔が見えた。 清酒祭仕込みの湯気の淑気かな   平成30年2018:1月8日3年前と同様に奈良・正暦寺の清酒祭を訪ねた。   今回も蒸し米を拡げるまで会場で待ったがその間、甑(こしき)の湯気が我々を時折包んだ。   湯気も正月のめでたい湯気だった。その後粕汁ときな粉・餡のひねり餅をいただいたので、   さらにめでたくなった。            回りつつ輪を狭めけり鴨の陣            平成30年2018:1月末大和民俗公園へ行った帰り、大和田城の北の池を訪ねた。      たまたま鴨が20羽くらい集まっていて鴨の陣を作っていた。   そのうち鴨たちが時計回りに回転をはじめた。   見ているとその輪が段々と狭くなってきた。そのうちの1羽が輪から抜けてしばらくして元に戻った。   何のために回転をしているのか興味があった。 ポン菓子を買ひ得て出れば春の雪   平成30年2018:2月前年の12月中学校のクリーンデイ(道路など環境掃除の日)、参加したら   懐かしいポン菓子をいただいた。また食べたくなり、買おうとしたが近くの店では売っていない。   やっと少し離れたスーパーで買えて、喜んで店を出たら春の雪が降っていた。   少しの間だが昔に戻った気分だった。           行列の古墳を過ぎる春祭   平成30年2018:4月奈良・大和神社のちゃんちゃん祭に参列した。   これは鉦を叩きながら馬に乗った市長や武者と各地区の代表の行列がお旅所へ神をお送りして   芸能をお見せする祭だが、お旅所への道には古墳があった。                     葉桜に緑の炎水陽炎   平成30年2018:4月奈良生駒市・北田原の山中の池を歩いた。   岸に坐って眺めていたら、岸に垂れる葉桜の葉に、水陽炎が映って揺れていた。   まるで、緑の炎が水面から上がっているようだった。                         老鶯の時過ぎゆくを惜しみ鳴く   平
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アカシア句集 18  前へ    次へ すこやかに老ゆるが仕事菖蒲の湯   平成29年2017:5月長い菖蒲の葉が2、3本浮く湯に浸かった。   78才にもなると健康に生きるのが仕事、と思った。医療費最小にすれば国家予算も助かる。 七つ目の星は背の上てんと虫                  平成29年2017:5月京都府精華町柘榴地区の山から乾谷を歩いた。途中の池の北側の細道の土手で休憩していたら   てんとう虫が一匹飛んできて左手に止まった。よく見ると、7つ目の黒い星は丁度背中の上にあった。いつも星を乗せて飛んでいるらしい。 河鹿嗚く川瀬に光あふれゐて   平成29年2017:6月奈良・丹生川上神社中社の水神祭に参列したあと、夢の淵を訪ねた。   そこには夢の淵という小さな滝と深い淵があった。そばの岩から川面を見ると、日差しに浅瀬にがきらめいていた。   しばらく川瀬を見ていたらリリリリリリ と河鹿が鳴いた。 伊勢道の句碑ある社菖蒲葺く   平成29年2017:6月奈良・丹生川上神社中社の水神祭に参列し夢の淵を見たあと、   東吉野村の鷲家八幡神社を訪ねた。社殿の屋根には旧節句に合わせて、菖蒲が葺いてあり、   境内に桂信子の句碑「おのづから伊勢みちとなる夏木立」があった。 堂縁に良き風来たる地蔵盆                    平成29年2017:7月奈良・伝香寺の地蔵盆は7月だった。4時から読経の中「はだか地蔵」の着せ替えがあり、   その後お守りをいただいた。境内で「いさがわ幼稚園」の盆踊りが始まる5時すぎまで堂縁で待った。   夕方になり境内の橙の木などを抜けて良い風が来た。   なめらかな父の筆跡終戦忌                    平成29年2017:8月終戦日の頃、母の遺品を整理していたら、父の残した厚さ3センチの昭和9年からの   覚え帳が出てきた。   当時家は食料品店だったので、山林売買や大きな商品仕入れなどが、父のなめらかな筆跡で筆書きされていた。 秋雲の白はお空が青いから   平成29年2017:9月奈良・大和民俗公園へ行く途中、田の中の一本道を通るが、見上げると青い秋空に   真っ白い雲が浮かんでいた。2007~2016年寮美千子さんに
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アカシア句集 17  前へ    次へ 稗蒔を吹きて青波立たせたり   平成28年2016:6月去年採っておいた稗の種を菓子の空箱の蓋に敷いた綿に撒いたら、ぎっしりと   きれいに青い稗苗が育った。それ上からを吹いたら、まるで植田の波のように青波が立った。 行き先は父の戦地か去ぬ燕   平成28年2016:8月16日奈良・平城宮跡の芦原には例年燕の大群が集まり、毎日数万羽が南へ飛び立つ。   孫たちと、夕方7時頃大極殿跡復元事業資料館の西側の軒下に燕の乱舞を見に行った。   この日集まった7万羽位の燕の一部は戦死した父の戦地だったガダルカナル島へ帰るのだろうか。 斑鳩の古墳を照らす望の月   平成28年2016:9月奈良・斑鳩の藤ノ木古墳に月見茶会に行った。   暗くなりすぎないうちに抹茶とお菓子をいただき、月の出を待った。薄雲を抜け出た満月がしっかりと   古墳の円い丘を照らした。古墳公園の木からは草雲雀が聞こえた。 死ねるかと近寄り見たり穴惑            平成28年2016:9月大和民俗公園へ富雄川沿いに歩いていたら、道端に蛇が横たわっていた。   近づいてよく見ると死んでいた。穴惑いが穴を見つける前に死んだらしい。 行く秋の小さき港に諸子舟   平成28年2016:10月琵琶湖・西岸の北小松・松水に先輩方と鮎の背がき料理に行った。   時間があったので北の漁港の方へ歩いたら、小さい漁港に諸子舟が10艘以上と繋がれていた。   誰もいなかったが猫が歩いていた。                     静けさを楽しみゐるや二羽の鴨   平成28年2016:10月大和民俗公園へ行った帰り、大和田城の北500メートル位の所に60メートル四方の   池があった。柵で囲まれているが、奥の方に鴨が二羽静かにしていた。   あたかも静けさと穏やかさを楽しんでしるようだった。             番台に餅花掛けてゐたりけり   平成28年2016:12月奈良・富雄駅近くのスーパーに立ち寄ったら、中にある店の入り口に   小さな餅花が掛けてあった。子供の頃正月に母に連れられて銭湯に行ったとき、番台に大きな餅花が   掛けてあったのを思い出した。              
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アカシア句集 16  前へ    次へ 浮図田の砂利に遊ぶ子地蔵盆   平成27年2015:8月奈良・元興寺の地蔵盆に参列した。   4時頃から若い人達が境内の五輪塔や浮図田(ふとでん:ふとは仏陀、仏塔)の多くの石仏に灯明皿を   置き、5時頃から法要、6時から琴尺八の演奏だったが、始まる前は子供達が浮図田の砂利で遊んでいた。 松虫や木の間に大極殿見えて   平成27年2015:9月平城宮跡に二十三夜の月待ちに行った。二十三夜は満月のあとの月が夜遅く出る   のを見るのだが、お天気に恵まれ下弦の半月を見ることができた。   大極殿を北西に見る草原の道を歩くと、コオロギの声のなかに「チンチロリン」という、特徴のある   松虫の声が聞こえた。これほどはっきり松虫を聞いたのは生まれて初めてでうれしかった。   月待ちの間に色々話がでた。その時の句に「月待ちに寺の跡継話出て」。 刈田焼く大和の国をけぶらして   平成27年2015:10月奈良・大和民俗公園へ富雄川の岸を南へ歩いた。途中の田は稲刈りが済んで、   農夫が一人、籾殻や雑草を焼いていた。その煙は風の方向が変わるので、四方へとひろがり、   まるで奈良だけでなく大和の国すべてをけぶらすかに見えた。   文机にひとつづつ減る棗の実   平成27年2015:10月奈良・奥明日香の入谷から桜井市鹿路を訪ねた。   途中の坂道に棗(なつめ)の木が一本沢山の実をつけていた。あまりにきれいな実だったので   5、6個ほど失敬して、自分の机の上の皿に置いた。そのうち食べたくなって毎日一つづつ食べた。   この句は、翌年1月の運河750号記念大会で西村和子先生の選に採っていただいた。 赤蜻蛉やっぱりここと戻りけり   平成27年2015:10月奈良・生駒市の高山竹林園を訪ねた。   庭園の建物の東側の坂の手すりに赤蜻蛉が止まっていたが、私が近づくと飛んでいった。   しばらく歩いて振り返ると、同じ赤蜻蛉が同じ所に止まっていた。この場所が好きだったらしい。   この句は、翌年1月の運河750号記念大会で山本洋子先生の選に採っていただいた。    吉隠の寺に一樹の冬紅葉   平成27年2015:11月奈良・桜井市の吉隠(よなばり)を訪ねた。   ここは、天武天皇
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アカシア句集 15  前へ    次へ 案山子なりこの辺に見ぬ洋装は          平成26年2014:8月奈良・山陵町(みささぎちょう)の塩塚古墳の西側の道を歩くと、のんびりとした   畑地に入るが、そこにこの辺りでは見かけない洋装の女性が立っていた。   よく見ると案山子だった。マネキン人形に洋服を着せていた。 寒釣の人よく動く日和かな  平成26年2014:11月奈良・吉野の桜木神社から津風呂湖を訪ねた。   ダムの南側に遊覧船の桟橋があり、そこで3、4人の人が多分へら鮒の寒釣りをしていた。   日差しが良くなって11月にしては暖かくなったためか、釣り人は結構桟橋を動いていた。                    女学生リーダーとして聖樹組む   平成26年2014:12月奈良・山陵町の田園から奈良大学の方へ歩いた。   途中の関西文化芸術大学の校庭を通ると、学生達がクリスマスツリーを組んでいた。   見ると、女学生が3、4人の男子学生を指揮していた。後輩学生かもしれないが。           雪しきり我が身昭和にあるごとく   平成27年2015:1月6日奈良はは雪だった。しきりに降る雪を見ていたら、子供の頃、生家の戸口から   町の通りに、しきりに降る雪を見ていたのを思い出した。昭和30年頃であるが、一瞬、あの頃と   何も変わっていないような気がした。     具の多き粕汁も出て清酒祭   平成27年2015:1月10日奈良・正暦寺の清酒祭を訪ねた。   正歴寺は清酒発祥の地とされ、この地の麹を使って酒の寒仕込みが行われる。数社の造酒会社の人々が   蒸した米を冷やすなどの作業をしたが、見学者には粕汁が振る舞われた。具が多く暖かかった。 神馬堂まで砂の飛ぶ春祭   平成27年2015:2月11日奈良・河合町の広瀬神社の砂かけ祭を訪ねた。この日はお田植祭であり、   砂を雨に見立てた祈雨の神事でもある。お田植えのあと、白覆面の農夫が田鋤きの途中から見物客に   砂をかけ、人々も農夫や他の人々に砂をかけた。砂が我々の避難している神馬堂まで飛んできた。 菜の花の金色浄土に遊びたし   平成27年2015:3月奈良・生駒
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アカシア句集 14   前へ    次へ 早乙女に牛握手してお田植祭   平成25年2013:6月30日奈良・石上神宮のお田植祭と夏越祭を訪ねた。   この日は石上神宮から神剣の行列が出る神剣渡御祭ののち、末社の神田神社でお田植祭があった。   神剣を立てた斎庭で、作男と牛が出て田耕をし、早乙女が苗を植える仕草をするのだが、   その前に、牛役が被った黒衣から手を出して早乙女と握手をしたのは愉快だった。   上がるほど白くなりゆく今日の月      平成25年2013:9月奈良・斑鳩の月を見るため法隆寺の東の上宮遺跡公園を訪ねた。   月の出を待っていると男女の二人連れも公園に来た。   東の空から月が上がってきたが、見ていると段々白く美しくなってきた。 磐座に木の葉落つるを待ちゐたり   平成25年2013:11月生駒市矢田遊歩道のドンデン池から小明町の稲倉神社を訪ねた。   説明板によると明治以降兵隊のがれ祈願の神社として信仰を集めたらしい。   ここには烏帽子岩と呼ばれる高さ6メートルの磐座がある。   磐座に木の葉が散るのを見ようと待ったがなかなか散らなかった。        長屋王の歌碑に楪飾りたる   平成25年2013:12月平城京の北の歌姫街道の添神社を訪ねた。   ここには長屋王の「佐保過ぎて奈良の手向(たむけ)に置く幣(ぬさ)は 妹を目離(めか)れず   相見(あひみ)しめとそ」万葉集巻3-300の歌碑があるが、年末だったので正月の楪(ゆずりは)が   飾ってあった。ここには菅原道真公の歌碑もある。           闇汁の中味減りゆく早さかな   平成26年2014:1月俳句の仲間で自宅で闇汁会をした。部屋を真っ暗にして、皆が持ち寄った具を   鍋にごちゃごちゃに入れて煮るのだが、これが意外に美味しいので、皆の箸が進み   あっという間になくなって、暗い中材料を継ぎ足した。          お水取参籠見舞に尼僧来て   平成26年2014:3月奈良・二月堂のお水取りを見学に行った。   明るいうちに食堂の横に行き、そばの参籠所を覗くと、尼僧が一人来ていて、参籠所の若い僧と   話していた。修行が二週間も続くので、参籠見舞いの品などを持って訪ねたのでしょう。   
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アカシア句集 13   前へ    次へ 美術館出れば異国の蝉の声   平成24年2012=9月長男一家の住むニュージャージーを訪ねたときメトロポリタン美術館を一緒に見学した。   館を出ると蝉の声が聞こえた。アメリカの蝉の声だった。英語で鳴いていたかもしれない。 乗馬して少女廻れり穂草原   平成24年2012:10月木津川の下河原を歩いた。テニスコートの北側に乗馬クラブがあり、   大きな木の周りを2、3頭の馬が騎手を乗せて歩いていた。その中に少女もいて、   手綱さばきも上手に、穂草の中を悠々と騎馬練習をしていた。        大川の曲がりおほらか桑黄葉    平成24年2012:11月奈良・川西町の糸井神社を訪ねた。太鼓踊りの絵馬など見て、寺川に出た。   橋のたもとに桑の木があり、きれいに黄葉していた。上流を見ると広い川が左へおおらかに   曲がってゆったりと流れていた。 近江富士望む漁港に焚火せり    平成24年2012:12月琵琶湖の堅田漁港を訪ねた。漁港自体は広くないが百合鴎が泳いており、   漁師の男性数人が浜で焚き火をしていた。我々も焚き火にあたらせてもらい、湖を見ると   対岸にきれいな近江富士(三上山)が見えた。 厠にも小豆粥置く小正月   平成25年2013:1月15日小正月、例年のように妻が椿の葉の上に小豆粥を乗せて、玄関、勝手口などに   置いた。手洗いに入ると、そのドアの内側の隅にも小豆粥の椿葉が置いてあった。           餅撒きて良き日終へたる春祭    平成25年2013:2月23日奈良・吉野町の国栖奏を見学に南国栖の浄見原神社を訪ねた。   吉野川の天皇淵の岩壁に取り付いているような高い場所の狭い神社に大勢がつめかけ、   古式な舞を見せていただいたが、そのあと祭の締めくくりとして地元の人々が餅まきをしてくれた。     塞の神祀れる道の茱萸の花    平成25年2013:4月河内龍泉寺から烏帽子形神社を経て岩瀬を訪ねた。南海高野線千早口駅の   東500メートル位のレストラン「歩絵夢」で食事後近くの谷道を歩いたら、塞の神が祀ってあった。   そばの坂道を登ると、ぐみの花が咲いていた。ぐみ畑の農夫と話したら、北原白秋の砂山という歌の   
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アカシア句集 12  前へ    次へ 枯芒触るれば温みありにけり   平成23年2011=12月京都山田川から木津川の上河原を訪ねた。鴨の群が全身揺られており、岸の枯れ芒に触れる     と猫の毛のように柔らかく暖かかった。 猪宿の犬を探せば部屋にゐし   平成24年2012=1月句会の先輩方と例年のように大柳生の猪宿に薬食いに行った。毎年宿の犬二匹が庭で迎えて       くれるのだが今年は姿が見えない。宿に入って探すと、二匹とも暖房の効いた部屋にいた。 形代の石に貼り付く冬の川   平成24年2012=1月木津川の河原を歩いた。   寒々しい冬の河原の岸の半分水に浸かった石に、白い形代(人形(ひとがた)の紙)が貼り付いていた。   おそらく上流の神社のそばの川から流れついたのだろう。   女性の名と年令67才と書いてあった。そっと紙を押して流した。 田遊びの田に水足して泥相撲   平成24年2012=2月奈良、江包の綱掛け神事を訪ねた。   田を横切って来る男綱と女綱を結び合わせて神社の木に掛けた後、田の中で泥相撲をする祭りで、   見ていると田の土が固いので水をバケツで足していた。勝っている方も泥に倒される面白い相撲だった。 み仏のおなかぽつこり花御堂   平成24年2012=4月8日奈良飛鳥寺の花祭りに参列した。   広くもない本堂に花御堂が作られ、誕生仏がかわいいお腹をぽっこりふくらませて立っておられた。   花御堂周辺だけが別世界のように華やいでいた。 尺蠖をけしかけゐたる女かな   平成24年2012=5月大阪四条畷市の室池から野崎観音、楠公寺を訪ねた。室池の森の中を歩いていたら、   上から長い糸を引いて尺取り虫がぶら下がっていた。同行の義姉が掌に虫を載せて、早く歩けとけしかけた。 安万侶の墓を鎮めて花の雨   平成24年2012=4月奈良大安万侶の墓を訪ねた。墓は茶畑の斜面にあり、登ろうとすると雨が降って来た。   見あげると供花のように桜が満開だった。 蓮開く音はあらずと言ひ切らる   平成24年2012=7月琵琶湖烏丸半島の蓮池を訪ねた。蓮の花は少なかったが葉の上の水玉が風と遊んでいた。   朝蓮の花の咲くとき音が出ると聞いていたので、同行者に聞くと、音はない
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アカシア句集 11   前へ    次へ  岩窟は賀茂の源流滴れり   平成23年2011=6月京都雲ケ畑の惟喬神社から志妙院を訪ねた。   寺の奥に岩窟があり、中の岩から雫が落ちていた。   説明板によるとここは賀茂川の源流のひとつらしい。周囲の青葉がきれいだった。 火を消して飛ぶとき迅き蛍かな   平成23年2011=6月飛鳥、稲渕の男縄の上流、飛び石に蛍狩りに行った。   暗くなるまで待っていたら河鹿が鳴いた。   少し下流の木立から蛍が点滅しながら飛ぶはじめた。   よく見ていると火を消している時は速く飛んでいるようだった。 女将指す大山蓮花終りしと   平成23年2011=7月東吉野村の天好園から七滝八壷を訪ねた。天候園では大山レンゲを期待したが、   女将に聞くと、あの辺ですが、もう花は終わりました、と言われた。 茅花流し竹炭窯の谷狭し   平成23年2011=6月京都府精華町山田川から乾谷を歩いた。  谷はだんだん狭くなった所に竹炭窯の   小屋があった。煙は出ていなかったが、茅花流しの風が吹いてきた。 梅花藻の花揺れ続けぶつからず   平成23年2011=8月滋賀の醒ケ井を訪ねた。ここは湧水の   地蔵川に梅花藻が美しい所で、我々が訪ねた時はちょうど良い花の時期だった。   花がやたら多いので風でぶつかりそうだったが、意外にぶつからなかった。 鬼取の谷ゆるがして威銃   平成23年2011=9月奈良大阪の県境の暗峠を再び訪ねた。   鬼取茶屋の女将に庭の花の名を聞くと蝶のよる木と言われた。そんな名の草はあるのかなと見ていたら   近くで威銃が谷を揺るがして鳴った。 鳰の子のひとり遊びをしてゐたる   平成23年2011=10月奈良大和民俗公園を訪ねた。   菖蒲園のそばの池に鳰の子が1羽だけいて、水に潜ったり泳いだりしていた。   邪魔するものがいないので、好き勝手に遊んでいた。 いつまでも綿虫宙に用事なし   平成23年2011=10月京田辺の水取から打田への谷道を歩いた。途中の坂道で綿虫が数匹飛んでいた。   見ていると疲れを知らないようにいつまでも宙に浮いている。   彼らには飛ぶ以外まったく用事がないようだった。 大根焚案内係の大坊主   平成23
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アカシア句集 10   前へ    次へ 師の句碑に炎天時をとどめたる   平成22年2010・7月奈良・学園前の峰の寺阿弥陀寺を訪ねた。この寺には運河で指導いただいた   山中麦邨先生の句碑「ここが炎天の中心かと思ふ」がある。この日も炎天で、木陰を探しながら   境内を歩いた。句碑を見ていると炎天の時間はそのまま止まっているようだった。 堰下に水鶏来てゐる秋日和   平成22年2010=10月近くの富雄川を歩いた。   富雄中学校前の堰下に水鶏が1羽いた。   水鶏を見たのは初めてで驚いた。川面には秋の日差しがあった。 草虱政治悪いと云ひて取る   平成22年2010=11月生駒市竹林園を訪ねた。   北側の池までの道を歩くと草じらみがズボンに沢山付いた。   池の辺りで休見がてら草虱を 政治が悪い など独り言を言いながら取った。 加夜奈留美の神の谷田にどんど組む   平成23年2011=1月御所市の吉祥草冠寺から飛鳥柏の森の加夜奈留実神社を訪ねた。   途中の道の畑の中に高さ5メートル位のとんどの竹組みがあった。   隙間には藁を詰めていつでも燃やせる準備ができていた。 薄氷の上まで波のすべりけり   平成23年2011=1月奈良飛鳥カントリークラブの奥の池を訪ねた。   池面の半分位に薄氷が張っていた。見ていると風が来て池波が薄氷の上まで滑って行った。   水が氷を溶かすまでは見なかった。 厄除の甘酒釜にまだあると   平成23年2011=2月奈良竜田大社の節分会を訪ねた。   境内では護摩が焚かれ、テントの下の釜では甘酒が暖められており、紙コップに一杯ずつ頂いた。   護摩の火が収まるまで見て帰ろうとテントの前を通ったら、甘酒まだあるよと言われておまけの甘酒を頂いた。   幸先の良い節分だった。 氷柱あるやと隧道を抜けにけり   平成23年2011=1月奈良、山陵町の北の田園を歩いた。   寒かったので崖などに氷柱があるのではと、近鉄橿原線の土塁の下の隧道先まで歩いたが見つけられなかった。 蛇泳ぎ切つたるあとの静けさよ   平成23年2011=5月奈良富雄川を大和田町日高大神の行者滝まで歩いた。   途中の山池を蛇が泳いで対岸まで進んだ。   泳ぎ着いたあと蛇は消えた