アカシア句集 20 前へ  次へ

皇后の荘たりし谷稲の花
  平成30年2018:8月下旬、精華町の山田川を歩いたら稲の花が咲いていた。
  通った精華町の柘榴地区は、地元の日出神社の説明によると奈良時代、光明皇后の荘園であったらしい。
  皇后のための稲を作っていた奈良時代から、稲の花が咲いていたと思うと不思議な気もした。

猪垣の中に山門宇陀の寺                   
  平成30年2018:9月奈良・宇陀市の仏隆寺を訪ねた。宇陀市といっても山の中の寺なので、猪や鹿が出るらしい。
  有名な彼岸花はまだ蕾だったが、寺の急坂に沢山白い茎を伸ばしていた。しかし山門への坂の途中に猪垣があり、
  手で扉を開け閉めしないと入れなかった。

デモ果てて帰りばらばら十日月
  平成30年2018:9月友人とJR奈良駅から三条通りを「九条改憲No!」のデモ行進に参加した。
  デモに参加したのは学生時代以来60年ぶりだったが、夕方だったので街は外国の観光客ばかりで
  あまり効果的でなかった。県庁前で解散したが、帰りはばらばらで半月が輝いていた。

作曲の一段落に虫の声
  平成30年2018:10月久しぶりにパソコンで行進曲を作曲した。出来栄えは不評だったが、
  自分なりに納得して3曲を作った。作り終えてファイルを保存したら虫の声が聞こえた。

綿弓を音立て弾く乙女かな
  平成30年2018:11月奈良・大和民俗公園のふるさとフェスタを訪ねたら民俗博物館の入り口のフロアでは、
  木綿糸作りの実演・演習があり、綿弓で糸ほぐしと糸車で糸作り(糸ぐり)をしていた。
  中学生らしい女生徒が指導員の指導を受けながら、綿弓で木綿の花を弾いて音を立てていた。
  芭蕉の句 「綿弓や琵琶になぐさむ竹の奥」にあるように、ビューンビューンと鳴らしていた。 

娘の立てし泡をほめもし初点前
  平成31年2019:1月正月に帰省した子の発案で長く使わなかった炉を使ってお茶会をした。
  孫娘が母親に教わりながらお茶を立てた。茶筅を使い泡がきれいにできたので、皆がほめながら
  初茶をいただいた。

淋し気に見ゆる桜の花盛り
  平成31年2019:4月近くの富雄川岸を歩いたら大きな桜の木が満開だった。
  桜並木なので、孤立しているわけではないが、なんとなく淋しげに見えた。
  見事な花盛りなのでこれからは散るしかないと感じた。

芭蕉聞きしひばりの声か細峠
  令和1年2019:5月子供の日、桜井市鹿路から細峠を経由して竜在峠に登った。
  細峠を右へ(西へ)折れて歩くと雲雀の声が聞こえた。細峠には芭蕉の句碑
  「ひばりより空にやすらふ峠かな」の句があるが、まさしく雲雀はやや下の方から聞こえたので、
  芭蕉もこのように雲雀の声を聞いたのだろうか、と昔を思った。

平らなるものの極みよ植田澄む
  令和1年2019:6月京田辺市の山田川沿いに木津川の方へ歩いたら、右手に田植の終わった植田が並んで
  どの田も水がきれいに澄んでいた。水田はまったく水平の緑なので、心が安まる。
  世の中に、これほど広くで水平なものは、他にあるだろうかと思った。 
  
過ぎゆくもの皆惜しむかにつくつくし
  令和1年2019:9月大和郡山市大和田町の行者滝を訪ねた。途中の谷道は法師蝉が「つくつくほうし、
  つくつくほうし」と繰り返し鳴いていた。夏が過ぎて、過ぎてゆく季節、色々な行事や生き物たちを
  法師蝉も惜しんで鳴いているのかもしれないと思った。

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