アカシア句集　24　　前へ　　　次へ

吾亦紅十花かたまり華やげり　  　

　　令和4年9月奈良の神功皇后陵を訪ねました。
　　柵の中に葛の葉が茂っており、その中に吾亦紅が咲いていました。
　　しばらく行くと吾亦紅が10本以上集まっているところがあり、
　　赤紫の吾亦紅がかたまると、緑のなかに華やいで見えました。
　　地味ですが皇后への供華のようでもありました。

鳰三羽潜る順番あるらしく　　　   　  

　　令和4年11月木津川市の大里公園を訪ねました。
　　公園の池には鳰（にお、かいつぶり）が3羽いましたが、　
　　彼らは同時に潜らずに、順番に潜っては池面に顔を出していました。
　　潜る順番を決めているようでした。

子に恵方向かせて取らす祝餅　　   　　

　　令和5年正月、子供、孫たちお屠蘇を祝いましたが、
　　例年のように木の盆に、祝餅、祝昆布、蜜柑、干柿を人数分置いて、
　　年の若い順に、それぞれ一個ずつ取るしきたりですが、
　　まず恵方に向いてお盆をささげて、おめでとうございますと言って取る
　　習慣です。今年もネットで恵方を調べて祝餅などを取らせました。

座敷童子立てし音かも春の夜　 　

　　令和5年３月夜明け前目が覚めて寝床でうとうとしていたら、
　　家のどこかで「ことり」と音がしました。
　　最近は家に鼠もいないし、何の音かなと思いましたが、おそらく
　　家のどこかにいる座敷童子だろうと思い、また眠りにつきました。

枝垂梅顔を寄すれば寄りきたる　　　 　

　　令和５年３月大和郡山市の源九郎稲荷神社を訪ねました。
　　神社の斎庭には六代目・中村勘九郎さんが襲名記念に植樹された枝垂れ梅が
　　咲いていました。
　　垂れ下がる梅の花に顔を寄せたら、風のおかげか花が顔に寄ってくれました。
　　庭の反対側では静御前の詩吟を聞き義経静御前の話を聞くグループがありました。

たんぽぽや地下に星座の古墳丘

      令和5年4月久しぶりに飛鳥のキトラ古墳を訪ねました。
　　壁画体験館で白虎や青龍などの壁画を見学後、外に出てたんぽぽに包まれたような
　　キトラ古墳を見ました。周囲は桜が満開でのどかな飛鳥の景色でした。
　　その後高松塚から甘樫の丘に登り桜吹雪に会いました。

物部の祖神の墓に黒揚羽

      令和5年5月物部氏の祖神といわれる饒速日命(にぎはやひのみこと)の墓を訪ねました。
　　お墓は生駒市白庭の山中にありますが、総合公園テニスコートの北側約500メートで
　　入口がわかりにくかったです。木々にかこまれた石塔ですが、しばらく見ていたら
     黒揚羽が一羽飛んできました。饒速日命の魂かとも思いました。

風なくば気ままに揺るる茅花かな　

　　令和5年5月生駒市鹿畑の山中の峠道を歩いていたら、道端に茅花の白い穂のかたまりが
　　ありました。茅花は柔らかいので風がなくても揺れています。しかし揺れる方向は
　　まったくばらばらで、それぞれが気ままに揺れるのを楽しんでいるようでした。　

遠花火何か忘れてゐるやうな

　　令和5年8月夜遠くの花火の音が聞こえたので、二階の窓から隣の屋根越しに見ました。
　　今年初めての花火でしたが、見ていると昔どこかで見た花火のようでした。
　　そのときのことやら、何か大切なことを忘れているような気がしました。

長脛彦走りし谷に威銃

　　令和5年8月大和郡山市の矢田丘陵の麓の谷を歩いていたら近くの田からでしょうか
　　突然、威銃の音がしました。このあたりで昔長脛彦が神武天皇と戦っただろうと
　　思いました。矢田丘陵の北には長脛彦と妻御炊屋姫の夫婦墓や妻の兄、饒速日命
　　（にぎはやひ）の墓があります。昔は銃のような武器はなかったでしょうが。