アカシア句集 8 前へ  次へ
雲雀鳴き止めば大和は静かなり
  平成15年2003・3月奈良・富雄川・砂茶屋の南を歩いていたら西側の田園の空で雲雀が続け様に
  鳴いていた。しばらくすると鳴きやみ、あたりが急に静かになり大和盆地全部が静寂に包まれた。

歌姫の土塁の跡よ囀れり
  平成16年2004・3月奈良・平城京の北の歌姫町を訪ねた。ここは奈良時代皇室の禁苑があった所で
  土塁で囲まれ、田園のほか歌姫と呼ばれた踊りや雅楽を奏する女性たちと警護兵らがすんだらしい。
  今は土塁の一部しか残らないが、訪ねると木立に賑やかに小鳥たちが歌っていた。
八つまで叩きて止みし鉦叩
  平成16年2004・9月家の庭に夜鉦叩が鳴いた。注意しないと聞き逃すほどの小さい音でチン、チンと
  8つまで叩いて止んだ。 次に叩くまで相当時間があった。
おももちは子雀の声聞きおはす
  平成17年2005・6月奈良・唐招提寺の開山忌に参列した。
  今は鑑真和上像はその身代わり像が安置されて年中公開されるが、この頃は開山忌期間中のみ、実物が
  公開された。開山堂でお像を拝すると、目をつぶって子雀らの声を聞いておられる面持ちだった。
蚊遣にと祖母焚きくれし松小枝
  平成18年2006・7月蚊取り線香を出す時期となった。線香を見て、昔子供の頃、夏休みに母の里の
  梨園の山の家で、祖母が蚊取り線香の代わりに、松の小枝を土間で燻べてくれたのを思い出した。
ひかりのみ見えしは秋の水馬
  平成19年2007・9月いつものメンバーで奈良東吉野村・天好園を訪ねた。庭園の奥に小川があり、
  流れの中にキラキラ光るものが見えた。よく見ると水馬(アメンボウ)だった。
公家谷の水美しく烏瓜
  平成19年2007・11月京田辺市・普賢寺地区を歩いた。関白近衛基通公が隠居された公家谷があるが、
  その谷のきれいな水の上に、赤い烏瓜が掛かっていた。
神還る声をうをうと星冴えて
  平成19年2007・12月17日奈良・おんまつりの夜、御旅所祭に参列した。さまざまな芸能奉納のあと、
  深夜神が春日神社若宮へ帰られるときは、大勢の白衣の神官に囲まれて白い布に包まれ、
  神官たちの「おうおう」という重々しい声に守られてゆっくり帰られた。冬の星空はきれいだった。
水馬まだあまたゐて暮石の忌
  平成20年2008・8月9日右城暮石先生の忌日、諸先輩と京都中山の清閑寺を訪ねた。
  翌日近くの富雄川に出ると、堰の上には水馬が沢山いた。
  先生の「いつからの一匹なるや水馬」を思い出した。最後は一匹になるのだろうか。
お目当ての小豆粥出て十夜寺
  平成20年2008・11月いつものメンバーで奈良・法徳寺のお十夜に参列した。
  お十夜は浄土宗の念仏会だが、小豆粥が振るまわれると聞いて喜んで参列、長いお経と説教が
  終わると期待通り小豆粥がでて美味しくいただいた。がまんの甲斐があった。

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