アカシア句集 16 前へ  次へ

浮図田の砂利に遊ぶ子地蔵盆
  平成27年2015:8月奈良・元興寺の地蔵盆に参列した。
  4時頃から若い人達が境内の五輪塔や浮図田(ふとでん:ふとは仏陀、仏塔)の多くの石仏に灯明皿を
  置き、5時頃から法要、6時から琴尺八の演奏だったが、始まる前は子供達が浮図田の砂利で遊んでいた。

松虫や木の間に大極殿見えて
  平成27年2015:9月平城宮跡に二十三夜の月待ちに行った。二十三夜は満月のあとの月が夜遅く出る
  のを見るのだが、お天気に恵まれ下弦の半月を見ることができた。
  大極殿を北西に見る草原の道を歩くと、コオロギの声のなかに「チンチロリン」という、特徴のある
  松虫の声が聞こえた。これほどはっきり松虫を聞いたのは生まれて初めてでうれしかった。
  月待ちの間に色々話がでた。その時の句に「月待ちに寺の跡継話出て」。

刈田焼く大和の国をけぶらして
  平成27年2015:10月奈良・大和民俗公園へ富雄川の岸を南へ歩いた。途中の田は稲刈りが済んで、
  農夫が一人、籾殻や雑草を焼いていた。その煙は風の方向が変わるので、四方へとひろがり、
  まるで奈良だけでなく大和の国すべてをけぶらすかに見えた。  

文机にひとつづつ減る棗の実
  平成27年2015:10月奈良・奥明日香の入谷から桜井市鹿路を訪ねた。
  途中の坂道に棗(なつめ)の木が一本沢山の実をつけていた。あまりにきれいな実だったので
  5、6個ほど失敬して、自分の机の上の皿に置いた。そのうち食べたくなって毎日一つづつ食べた。
  この句は、翌年1月の運河750号記念大会で西村和子先生の選に採っていただいた。

赤蜻蛉やっぱりここと戻りけり
  平成27年2015:10月奈良・生駒市の高山竹林園を訪ねた。
  庭園の建物の東側の坂の手すりに赤蜻蛉が止まっていたが、私が近づくと飛んでいった。
  しばらく歩いて振り返ると、同じ赤蜻蛉が同じ所に止まっていた。この場所が好きだったらしい。
  この句は、翌年1月の運河750号記念大会で山本洋子先生の選に採っていただいた。
  
吉隠の寺に一樹の冬紅葉
  平成27年2015:11月奈良・桜井市の吉隠(よなばり)を訪ねた。
  ここは、天武天皇の穂積皇子がなき但馬皇女を偲んで詠んだ万葉集の歌
  「降る雪は あはにな降りそ 吉隠の 猪養(ヰカヒ)の岡の 寒からまくに」に詠まれた地。
  実生の楓を取りに来ていた地元の男性に、教えてもらい極楽寺(無住寺)を訪ねた。
  せまい庭に冬紅葉が一樹きれいだった。庚申堂もあった。
  但馬皇女のお墓の場所はわからないらしい。

宝銭撒く僧よく肥えて初弁天
  平成28年2016:1月奈良・霊山寺の初弁天にお参りした。
  奈良時代行基菩薩建立と伝えるこの寺の弁天堂に5、60人が集まり、8人の僧で法要が終わった12時頃
  一人のよく肥えた僧が宝銭の沢山ついた笹の葉を振って、人々に宝銭をばらまいた。
  宝銭をいただいた後、別の天竜閣でお雑煮をいただいた。

粥占にほどよき寒さ戻りけり
  平成28年2016:2月1日奈良・郡山市の登弥神社の粥占いに参列した。
  まだ暗い6時半ころから人々が集まり7時過ぎから玉串奉奠などの神事後、小豆粥の中で茹でられた竹筒を
  釜から取り出して、一本ずつ割って中の小豆の数などで作物の豊凶を占った。
  神社の周囲は十分に寒さが戻って、占い終了後、小豆粥と笹酒をいただいた。

傾ける日にはなやぎて桃の花
  平成28年2016:4月奈良・桧原神社からその南の桃畑を訪ねた。
  雲雀が大和三山を見下ろして鳴いていた。丘の畑に登ると二上山の上に傾いた日に照らされて、
  桃の花がいっそう華やかに見えた。

下通るときのうれしさえごの花
  平成28年2016:5月奈良・王龍寺から鳥見町のあひる池を訪ねた。
  王龍寺は昔寺山を大部分飛鳥カントリークラブに分譲したらしいが、もと寺領の道の脇にはエゴノキが
  咲いており、道の上に伸びた枝からもえごの花が小さな釣鐘状の花をぶらさげていた。
  白い花の下を通るときは、なんとなく華やいで嬉しい気分になった。

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