アカシア句集 12 前へ  次へ

枯芒触るれば温みありにけり
  平成23年2011=12月京都山田川から木津川の上河原を訪ねた。鴨の群が全身揺られており、岸の枯れ芒に触れる
    と猫の毛のように柔らかく暖かかった。

猪宿の犬を探せば部屋にゐし
  平成24年2012=1月句会の先輩方と例年のように大柳生の猪宿に薬食いに行った。毎年宿の犬二匹が庭で迎えて
      くれるのだが今年は姿が見えない。宿に入って探すと、二匹とも暖房の効いた部屋にいた。

形代の石に貼り付く冬の川
  平成24年2012=1月木津川の河原を歩いた。
  寒々しい冬の河原の岸の半分水に浸かった石に、白い形代(人形(ひとがた)の紙)が貼り付いていた。
  おそらく上流の神社のそばの川から流れついたのだろう。
  女性の名と年令67才と書いてあった。そっと紙を押して流した。

田遊びの田に水足して泥相撲
  平成24年2012=2月奈良、江包の綱掛け神事を訪ねた。
  田を横切って来る男綱と女綱を結び合わせて神社の木に掛けた後、田の中で泥相撲をする祭りで、
  見ていると田の土が固いので水をバケツで足していた。勝っている方も泥に倒される面白い相撲だった。

み仏のおなかぽつこり花御堂
  平成24年2012=4月8日奈良飛鳥寺の花祭りに参列した。
  広くもない本堂に花御堂が作られ、誕生仏がかわいいお腹をぽっこりふくらませて立っておられた。
  花御堂周辺だけが別世界のように華やいでいた。

尺蠖をけしかけゐたる女かな
  平成24年2012=5月大阪四条畷市の室池から野崎観音、楠公寺を訪ねた。室池の森の中を歩いていたら、
  上から長い糸を引いて尺取り虫がぶら下がっていた。同行の義姉が掌に虫を載せて、早く歩けとけしかけた。

安万侶の墓を鎮めて花の雨
  平成24年2012=4月奈良大安万侶の墓を訪ねた。墓は茶畑の斜面にあり、登ろうとすると雨が降って来た。
  見あげると供花のように桜が満開だった。

蓮開く音はあらずと言ひ切らる
  平成24年2012=7月琵琶湖烏丸半島の蓮池を訪ねた。蓮の花は少なかったが葉の上の水玉が風と遊んでいた。
  朝蓮の花の咲くとき音が出ると聞いていたので、同行者に聞くと、音はないと言い切られた。

神霊地探しと云ひて滝に来し
  平成24年2012=7月奈良大和田町の行者滝を訪ねた。滝を見ていたら若者が一人滝に来た。
  聞くと神霊地を探して歩いていると言った。そのような趣味もあるのかと驚いた。

蓮の葉の盆舟母と送りけり
  平成24年2012=8月奈良大和田町の行者滝に行く途中、富雄川に盆の供物の茄子が浮いていた。
  子供の頃母が蓮の葉に茄子やおにぎりなどと線香を置いて、家の下の川に戦争で死んだ父の霊を共に見送った
  のを思い出した。

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