アカシア句集 7 前へ  次へ

鳰浮くを百まで数え待ちにけり
  平成5年1993・11月近くの奈良・大渕池を歩いた。冬になると水鳥が多く来るが、この日は鳰だけが、
  2,3羽潜ったり泳いだりしていた。1羽が潜ったあと百まで数えたが出てこない。
  あわれ水に溺れたのかと思ったが、おそらくここから見えない所に浮き出たのだろう。

翡翠のくわへし魚を振り打てり
  平成6年1994・3月奈良・富雄駅近くの富雄川を歩いていたら、青い翡翠(かわせみ)が石に止まり、
  咥えてきた魚を石に振りつけた。あっという間の出来事だった。  

藤棚を小舟に乗りて剪定す
  平成6年1994・9月東京・港区の愛宕山は会社に近かったのでよく登った。夏も終わったがまだ暑く、
  愛宕神社の木々は茂っていた。小さな池の上に掛かる藤棚の藤は小舟に乗って剪定していた。

化石洗ふ水の冷たき夏山に
  平成8年1996・7月会社の同僚に誘われ、川崎市・生田緑地での化石採集会に参加した。
  小さな有孔虫などの化石だが、土にまみれていたで緑地の中の蛇口の冷たい水で洗った。
  この年2月は登戸近くの多摩川二ヶ領堰工事で流れを止めたので化石採集会があり参加した。

要塞の跡に船寄せ眼張釣る
  平成10年1998・3月会社の釣りクラブで金沢八景に海釣りに行った。
  釣り船一ノ瀬丸は横須賀の猿島要塞跡の海に船をつけたので、人に分けるほどメバルが沢山釣れた。
  同年7月号の運河では茨木先生の真味求心に取り上げていただいた。
大仏殿黒々見えて蛍かな
  平成12年2000・6月奈良・東大寺の大仏蛍を見に行った。
  大湯屋のそばの小川からは蛍より暗い二月堂の灯が見えて、右手には大仏殿が黒々と見えた。

水掛祭ビルマの美女の水を受く
  平成13年2001・4月退職後、海外協力事業でビルマ(ミャンマー)の統計局のコンピュータ・
  システムの調査・提案で1ヶ月ヤンゴンに滞在した折、水掛祭に誘われた。
  市内の道では車の上から若い男性や美女が周囲の我々に水を掛けて回った。

鮴泳ぐ時くっきりと底に影
  平成13年2001・7月奈良・吉野川の鮎釣りを見た後、東吉野村の中井渓谷自然塾を訪ねた。
  夏休み中で子供たちが20人位、渓谷の川で遊んでいた。川の澄んだ水を見ていたら、
  鮴(ごり)がいたが、底から浮いたときその影が本物よりくっきりと黒く見えた。

サマータイム唄ふ汗ばむ嬰抱きて
  平成14年2002・7月長男の家新築・移転などで初孫を何度か預かった。
  そのときは汗ばむ子を抱いて寝かせるのにサマータイムを唄った。
  ミュージカル「ボギーとペス」の子守唄で、最後の歌詞が気に入っていた。

賀状買ふメモ絶筆に逝き給ふ
  平成14年2002・12月母が4日間眠ったまま亡くなった。遺品を整理したら、年賀状・xx枚と買いた、
  買い物のメモが出てきた。まさか眠ったまま死ぬとは思っていなかっただろう。

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