アカシア句集 5  前へ  次へ

葭切や色落ちつきし朱雀門
  平成19年2007・7月平城京朱雀門を訪ねた。平成10年復元が完成した頃は、朱の色も明るく
  いかにも復元したという感じであったが、9年も経つと色も落ち着いてそれなりに風格が出てきた。
  それを喜ぶように近くの草原で葭切が元気よく鳴いていた。
邯鄲や旅愁は母の好きし唄
  平成19年2007・9月庭で邯鄲(かんたん)のやや低く落ち着いた鳴き声が聞こえた。
  聞いていると昔を思い出し、母が「ふけゆく秋の夜旅の空の」という歌・旅愁が
  好きだったことを思い出した。
神山に月登れりと声あがる
  平成19年2007・9月奈良・三輪大社の観月会に参加した。
  祈祷殿の庭から三輪山を仰いでいたが、なかなか月が出ない。 
  すると、誰かが「月が出た」と声を上げた。
桧皮葺濡るる如くに今日の月
  平成19年2007・9月奈良・三輪大社の観月会の折、拝殿を見上げると月の光に
  照らされて檜皮葺の屋根が濡れているように美しかった。
  まるで月の雫が三輪の森に降ったように。
人生に待つこと多し芦の角
  平成20年2008・3月奈良の西の大渕池周囲はよく歩くが、3月下旬池のなだらかな
  岸辺に芦の角(若芽)がいくつも見えた。出てくるまで芦の根は待っただろうし、
  伸びて若葉が出るまで日にちがかかる。人生も同様待つことが多いと思った。
眼前に長城迫り栗の花
  平成20年2008・6月北京に住む長男一家に招かれて次男一家と7人で北京を訪ねた。
  天安門や故宮博物館、胡同などの前に暮田峪長城を訪ねた。長城の入り口付近は
  栗の花が白かった。
冬萌えのここにも池の青藻かな
  平成21年2009・1月奈良・飛鳥カントリークラブの奥の池を訪ねた。
  山の池は澄んでいて、底の青藻に日が差すほどで、藻さえ冬萌えをしているようだった。
砂底の影と別れて蝌蚪浮けり
  平成21年2009・3月京田辺市高船の東・打田に炭焼き窯と半円の池がある。
  その池にはおたまじゃくしが沢山底と水面を何度も往復していたが、
  よく見ると砂底にくっきりと影を残して上昇していた。   
水争いありし峠に春の雪
  平成21年2009・3月雛の日に奈良・御所市関屋の葛木水分神社を訪ねた。
  この峠は江戸時代西の大阪側と峠の水を東西どちらに流すか水争いがあって、
  古い文書のおかげで奈良側に水を取り戻したとのこと。
  その昔を思っていたら春の雪が降ってきた。
生きるとは選びゆくこと土筆摘む
  平成21年2009・4月テレビで天皇皇后両陛下が皇居内の原で土筆を摘まれていた。
  天皇が后に「その土筆の方がいいよ」とか言われながら摘まれた。
  考えてみれば土筆摘みどころか、人生すべて選択の連続だったと思った。
  自分の選択が良かったかどうかはわからないが、良かったと思うしかない。

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